ジェイソンのブログ

JASONにおけるNMRデータ処理:ROSY

3月 28, 2024|

最近、 JASON 3.2 で緩和データの便利な処理と解析が導入されました。このコンセプトは拡散NMRやDOSYのサポートに似ています。解析には積分、ピーク、またはすべてのデータポイントを使用することができ、ROSY(Relaxation Ordered SpectroscopY)プロットは結果のT1値とそれぞれの推定誤差から構築されます。JASON 3.2では、ROSY処理機能はインバージョンリカバリー、T1実験のみをサポートしていますが、近日中に他のあらゆる一般的な手法に拡張される予定です。ユーザー定義の方程式による積分のフィッティングを含むあらゆる配列実験のマニュアル解析は、すでにJASONに実装されています。DOSYと同様の処理ステップとしてROSYを実装した目的は、ユーザーエクスペリエンスを向上させ、データ処理エンジンによるより良い自動化を可能にすることです。 図1 JASONにおけるインバージョンリカバリー(T1)実験の解析と処理 [...]

JASONバージョン3.2は、JASONチームによる2024年の最初のリリースです。

2月 22, 2024|

JASONバージョン3.2は、JASONチームによる2024年の最初のリリースです。   JASON 3.2では、NMRとともに質量分析データも追加できるようになりました。JEOL JMS-S3000 SpiralTOF(MALDI-TOFMS) のユーザーは、JASONにデータを読み込むことができるようになり、JEOL JMS-S3000 SpiralTOF の質量分析(MS)データをパラメータとピークの簡単なレポートと一緒に表示することができます。 [...]

JASON 3.1 – 機能の拡張と自動化-

11月 13, 2023|

JASONバージョン3.1が登場し、NMR処理・分析機能と自動化オプションが拡張されました!   DOSY機能が拡張 JASON 3.1では、DOSY結果を報告する新しいテーブルが導入され、Arrayedテーブルやチャートと並んで、Kineticパネルから作成できるようになりました。 フィッティングダイアログでは、Stejskal-Tanner方程式がサポートされ、拡散データのフィッティングやDOSY解析を視覚化することができます。パルスシーケンスパラメータから直接、補正された拡散時間の自動計算機能を導入しました。 外部コマンド処理スクリプト(関連記事:External Command processing scripts, [...]

JASONの能力を拡張する (その3) :高度な外部処理、t1ノイズ除去

10月 11, 2023|

これまでこのシリーズでは、JASONが処理中のデータを外部プログラムに渡すことで、JASON内では現在利用できない処理を実行できることを紹介しました。今回は、t1ノイズ除去のための処理関数をpythonでプロトタイピングした後、開発チームがJASONのメインコードに実装した実際のアプリケーションを紹介します。 高ダイナミックレンジのサンプルは、2次元スペクトルの間接観測軸の方向に好ましからざる様相を呈することがあります。これはいわゆるt1ノイズと呼ばれるもので、各t1インクリメント間の信号強度の小さな変動から生じます。これらの変動はt1では変調されないため、スペクトル上のt1/F方向に平行な縞模様として現れ、かつスペクトル中の強い信号と関連しています。最新の分光計ハードウェアはこのようなアーティファクトを大幅に減少させますが、データ処理段階で除去する必要がある場合もあります。   t1ノイズを抑制するアルゴリズムは数多く存在しますが、このブログでは、ManolerasとNortonが提案し、Journal of Biomolecular NMRに掲載されたものを紹介します(J. Biomol. NMR 2 [...]

JASONのパワーを拡張する(その2) :MATLABとRによる外部コマンド処理

9月 10, 2023|

前回のブログでは、JASONの外部コマンド処理としてpythonを使用し、NMR処理過程のどのポイントでもデータに対して操作を実行できることを説明しました。これは、例えば新しいデータ処理のアプローチを開発するユーザーにとっては、非常に強力でかつ柔軟なツールとなります。 しかし、もしあなたのお気に入りのプログラミング言語がpythonでなかったら?JASONの外部コマンド処理機能は、HDF5フォーマットのデータを読むことができるすべての外部プログラムやスクリプトにデータを送ることができます。これには、最新のプログラミング言語の大半(そしてそうでないものも!)が含まれます。 このブログでは、MATLABとRスクリプトの両方をJASONから呼び出し、前のブログで説明したのと同じ操作を実行する方法を紹介します。MATLABはネイティブでHDF5ファイルの読み書きをサポートしていますが、Rは追加のライブラリをインストールする必要があります。このブログで紹介する例では、rhdf5ライブラリを使用します。 MATLABスクリプトは、前回説明したinvert.py pythonスクリプトと概念的に非常に似ています。MATLABファイルはデータに適用される関数を実装しています。MATLABはすでにinvert()と呼ばれる関数を持っているので、誤って間違った関数を呼び出さないように、この関数に別の名前、この場合はinvertspec()を付けます。h5read()関数とh5write()関数は、HDF5ファイルからデータを読み書きします: 前のブログ記事のpythonスクリプトのように、データセットのサイズを変更しないので、元のデータを変更後のデータに置き換えるだけです。 JASONからこのスクリプトを呼び出すのは簡単です。外部コマンドの処理項目を処理リストに追加し、いくつかのオプションを設定するだけです。MATLABの場合、コマンドは単に "matlab "で、引数は以下の通りです: -nojvm [...]

  • Image depicts a 3D NMR spectrum with overlays of the JASON settings showing the plane selection in the top left and the slider to navigate through the data plane by plane in the bottom right.

Introducing JASON Version 3.0

8月 16, 2023|

JASON バージョン 3.0 のリリース 今回のJASON 3.0は発売開始以来で最も大きなリリースの一つになります。その中身には、マルチベンダー対応の商用NMRソフトウェアとしては初めてとなる3Dスペクトルデータのサポートが含まれます。 3Dデータのサポート 3D NMRデータの取り扱いの要請に応えて、JASON 3.0では、例えばHNCAなどに代表される3Dデータ(FID)の処理(JEOLデータ)と、そのスペクトルデータの表示(JEOL及びBrukerデータ)が可能となりました。 [...]

JASONの機能を拡張する (その1) :外部コマンド処理項目の使い方

8月 10, 2023|

JASONには、NMRデータを処理・解析するための強力なツールが揃っていますが、時にはJASONにはないような処理を行いたいこともあるでしょう。このブログ記事シリーズでは、「外部コマンド」という処理機能の使い方を紹介します。これにより、NMRデータを外部プログラムに渡し、何らかの処理を行わせ、その結果を再度JASONに返すようなことを実行することが出来ます。 この機能はどのような方に適しているでしょうか?例えば、Non-uniformサンプリング再構成法、新しい窓関数、信号処理技術など、新しい処理技術を開発している研究者は、このような機能が不可欠であることに気づくでしょう。実際、利用者はNMRデータの処理過程のどの時点でも、また何回でも、外部プログラムによる処理のためにデータを送ることが出来るので完全に自分のデータをコントロールすることが出来ます。 この機能はどのように動作するのでしょうか? JASONは、HDF5というファイル形式でデータを保存します。この形式は、Python、Matlab、R、Mathematicaなどを含む主要なプログラミング言語のHDF5ライブラリにより、さまざまなツールで読むことが出来ます。つまりあなたの好みの言語を外部スクリプトとして使うことが出来るのです! データは「外部コマンド」の引数として指定されます。JASONはそれをスリム化されたHDFファイルとして生成し、外部処理に渡します。外部計算が完了すると、JASONは出力を読み返し、処理は処理リストの次の項目に進みます。 このブログでは、簡単なpythonスクリプトを使った外部コマンド処理の使い方を紹介します。ここに紹介した例は、単純にスペクトルを反転させるだけのものですが、もちろん、もっと高度な計算も可能です。限界は、もしあるとすれば、あなたの想像の中だけに存在するものです! これから説明するpythonスクリプトを以下に示します。Pythonは、h5pyライブラリを使用してHDF5ファイルにアクセスすることができます。h5pyライブラリは、Pythonでの科学計算によく使用されるNumPy配列としてデータを返します。   スクリプトは、python標準ライブラリからh5pyとNumPy、sysをインポートする3つのステートメントから始まります。JASONから送られたHDF5ファイルは、h5py.File()関数を使ってファイルハンドルとして開かれます。セキュリティ上の理由から、NMRデータはJASONからランダムなファイル名で送信されるため、sys.argvリストを通して、これをpythonスクリプトの入力引数の一つとして取り込みます。 ファイルを開くと、その中のNMRデータはpythonのライブラリ構文を使ってアクセスできます。HDF5ファイルはデータを格納するためにパスのような階層構造を使用し、これらのパスはライブラリのキーとして使用されます。例えば、NMRスペクトルの実数部は/JasonDocument/DataPoints/0にあり、/JasonDocument/DataPoints/1は虚数部にあります。 [...]

JASONでのNMRデータ処理:全機能一覧

7月 28, 2023|

JASONのバージョン3.0の最も重要な新機能の一つは、生体分子のNMRアプリケーションで日常的に収集されるような3Dデータのサポートです。これを念頭に置いて、このブログではJASON 3.0で実装されたすべての利用可能な処理関数の簡単な概要を説明しようと思います。個々の機能のより詳細な説明は、今後のブログ記事で取り上げる予定です。図1は、JASONの開発とテストのためにJEOL USAの同僚から提供された3D HNCAスペクトルを使った例です。現在適用されている処理は、左側の "Processing "パネルに表示されています。3Dリストは、F3として宣言された直接観測軸、2つの間接観測軸F2とF1からなります。図1では、3Dスペクトルで選択されたF3(1H)-F1(13C)2D平面の上に”Edit Processing”ダイアログが表示されています。左側の "Available "というラベルの下に、利用可能なすべての処理関数のリストが表示されています。マウスの左ボタンを使って、要素を "Selected [...]

旧システムにおける機器使用情報の抽出

3月 12, 2023|

  最新のJEOL NMR装置に付属しているソフトウェアでは、システムがどのように使用されたかを管理者が評価することができます。JEOL Delta ver.5およびDelta ver.6ソフトウェアは、異なるユーザーに使用料を請求する必要がある場合でも、特定の測定を実行するためにどれだけの装置時間を費やしたかを評価したい場合でも、詳細な情報を提供し、装置時間を要約し、課金率が割り当て、各ユーザーにいくら請求するかを直接報告することができます。   しかし、すべてのプログラムがそのようなツールを提供しているわけではありません。例えば、20年以上前にリリースされたDelta ver.4は、いまだに多くの日本電子の旧システムで動作していますが、そのようなツールは提供されていません。しかし、console.log と呼ばれる、装置が何をしていたかのログは出力されます。このログには、装置の動作に関する詳細情報がたくさん含まれています。では、各測定でどれくらいの時間が費やされたかという情報を抽出するにはどうすればよいのでしょうか?そのためには、ログから関連する行を抽出するスクリプトを使えばよいです。Pythonは科学界で広く使われているスクリプト言語であり、JASONは必要に応じてPythonスクリプトを直接実行することができます。このようなスクリプトは、使い慣れたプログラミング言語で作成することができます。 [...]

「お気に入り」タブ:よく使うフォルダのアクセスに

9月 30, 2022|

「お気に入り(Favorites)」フォルダを使っていますか? 何度もアクセスするデータフォルダがある場合、それを「お気に入り」タブに追加しておくと作業がとても効率的になります。あなたには何度も使うファイルはありますか?それは分子構造やテキストのファイルかもしれませんが、これらも「お気に入り」のフォルダに追加しておくことが出来ます。 「お気に入り(Favorites)」タブとその働き お気に入りタブは、ファイルブラウザパネルの一部として「ファイル」、「履歴」タブの隣にあります。 「お気に入り」タブはユーザーによって埋められていくものです。したがって、初めて開いたときや、設定を工場出荷時に戻すを選択したときには、「お気に入り」タブは空っぽであります。しかし心配には及びません、ここにフォルダを加えるのはとても簡単ですので。 「お気に入り」タブにフォルダを加える お気に入りタブにフォルダを追加する方法はいくつかあり、自分に合った方法を選ぶことができます。以下、それぞれの方法を説明します。 お気に入りタブにフォルダを追加する最初の方法は、ファイルブラウザの「ファイル」タブから行う方法です。「ファイル」タブ内でお気に入りに追加したいフォルダをクリックで選択し、そのうえでファイルパネルの上部ファイルパス右側の星印のボタンをクリックします。     [...]

NMRスペクトルの表示を変える — CANVASをカスタマイズ

7月 30, 2022|

JASON CANVAS(キャンバス)の紹介: JASONにおいてユニークかつ素敵なことのひとつは、キャンバス(CANVAS)であると思います。キャンバスでは、複数の異なる種類のアイテムを同時に開くことができるます。また解析しているNMRスペクトルと(予測)分子構造との間にリンクを作ることなどができます。リンクをつくる方法については、今後のブログ記事でまた改めて紹介する予定です。 JASONのキャンバスは、データ(NMRデータ、分子構造、シミュレーション・スペクトル、信号帰属の予測、画像、テキスト)表示とユーザーの操作について、新たな可能性を拓くものです。しかし、作成するドキュメントの最終的な見栄えについての好みやニーズは人によって異なるものであることをわれわれは認識していいます。実際、JASONの開発チームのメンバーの中で、キャンバスの設定をお互い同じにしている2人はいないと思います。 この記事では、NMRスペクトルの表示方法に関して、JASONにはどのような選択肢があるのかを紹介したいと思います。 グリッド線の表示 キャンバスで開いたスペクトルには、グリッド線を表示することが出来ます。このグリッド線は固定したものではなく、スペクトルのズームレベルに合わせてスケールが調整されます。また、設定により、グリッド線を常に(グローバルに)表示する、もしくは非表示にする選択が出来ます。あるいは、個々のスペクトルに対して、それを表示もしくは非表示にするよう選択することも出来ます。下の画像は、同じスペクトルに対してグリッド線を表示(上)もしくは非表示(下)にしたものになります。 Comparing the [...]

結合定数を測る:part1

7月 8, 2022|

NMR分光法において、1Hと13Cのような核間の異種核スピン-スピン結合は豊富な化学構造情報を提供します。しかしながら、時には情報が多すぎることや1H-1Hスカラーカップリングのような競合する情報に惑わされることが問題となります。複雑なNMRスペクトルを単純化したり、結合定数の測定を容易にしたりするため、これまで長年にわたって、数多くの非常にエレガントで興味深いNMRの手法が開発されてきました。これからいくつかの投稿を通して、最も重要で汎用的な方法に関する簡単な概要を提示しようと思います。最初の投稿では、数ある実験手法の中でも最もシンプルな選択的デカップリングを高分解能13Cスペクトルに使用した例を示します。以下に示すデータはROYAL-HFXプローブを備えた3チャンネルの JEOL ECZ-500分光計で測定し、JASONソフトウェアによって解析を行ったものです。   二重共鳴法 二重共鳴NMR(デカップリング)のアイデアはNMRが出始めた頃にWeston A. Andersonの論文の中で生まれました。そのWes(Weston)の仕事を含み、1950年代初頭(化学者がNMRを見つけた頃)のNMRに関する非常に良いレビューにRay Freemanのブログ(http://ray-freeman.org/nmr-history.html)があります。この文章は、啓蒙的で歴史的に重要なだけでなく、読んでいて非常に楽しいものでもあります。   パーフルオロ分子の例 [...]